にちプチ 【Nichi-Petit】

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【脛骨・腓骨 骨折】骨折ダイアリー Vol.9

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↓前回までの骨折ダイアリー↓ 

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期間限定パラリンピック

 前回より病院を変更してウキウキな俺であったが本当に大変なのはこれからであった。

何せ足の自由が利かないもんだから、いつもなら当然できることが全くできない。

かつ、松葉杖なんていう慣れないツールでの移動になるもんだから、「ちょっとそこまで……」のおつかいですら登山なみの覚悟が必要なんだ。

 

そこで考える。

「こりゃ毎朝病院まで杖で通うのはホネだぞ……」と。(骨だけに)

 

そこで先生に相談する。

「すいません、車椅子とかってお貸しいただけるんでしょうか?」

 

「えっとね、うちでは車椅子は外来の患者さんに貸し出ししてないんですよ」

 

アウチ! 自宅療養の許可が出て喜んでいたら、移動手段が無かった!

ある程度怪我が回復してくれば、歩いて通うことがリハビリになるのだが、手術後1週間ほどの今はもう少し甘えていたい。

 

先生はたぶんそんな俺の考えを組んでくれたんだろう。

 

「当院では無理ですが、たしか近所に貸し出しをしてくれる施設があったはずです」

と車椅子の貸し出し業者さんを紹介してくれた。

早速別の若い男性の先生が電話をして業者を呼んでくれるという。

 

他にもタクシーで通院したり、傷病患者専用の送迎車なんかもあったんだけど、如何せん高い。

1回1000円~4500円。通院が大変だとはいえ、普通の人が歩いて10分かからない距離に毎日そんな大金は払えない。

車椅子という選択は俺にとって必然であり必須であった。

 

業者が来る間に料金や車椅子の説明を受ける。

松葉杖のレンタルが5000円だった(デポジットだけど)ことを考えると、月1万くらいは覚悟しなきゃな……とドキドキしていた。

 

「車椅子のレンタル料金は、1日100円、1ヶ月の場合は割引されて1500円です。後払いなのでそのときに借りた日数分精算するようですね」

 

え……?

 

やっっっっっす!!!

 

業者のパンフレットを持った優しそうな男の先生が、これまた優しそうに説明してくれる。

あぁ……この病院は優しさに溢れすぎてんよ……


そんなことを思っていると業者の人が病院に到着。

どうやら割りと近所らしいぞ。もってきてくれたのはきれいな車椅子。(写真は参考)

 

 

「この度はお怪我をなされまして本当に大変でございましたね」

 

業者の人までこんな俺を労わってくれる。

おい、ここ一週間辛かったから泣いちゃうぞ俺。

竜宮城で接待される浦島太郎のような一時を過ごした末、俺は車椅子という現時点で最強の装備品を手に入れた!

そして病院の精算も済ませ、いざ家路へ!

 

……しかし外はあいにくの雨模様。


しまったあああああああ!! 午後から雨ふるって言ってたなあ!!

でも一度振り上げた手はもう収められない。

俺は仕方なく車椅子に無理やり松葉杖を積んで走り出す。

幸い雨はまだ小降りなので急げばチョイ濡れくらいで済ますことができるかもしれない。

そんなこと考えていた俺が甘かった。


車椅子に乗ったことがある人なら分かると思うのだが、アレって思った以上にまっすぐ進むのが難しい。

パラリンピックなんかの選手がすごいスピードで疾走できるのは、そのために作られた車椅子であることと、何よりも下半身の不自由をカバーする強靭な上半身の肉体があるからなのだ。

 

それをこんなヒョロッヒョロのモヤシを通り越してアルファルファみたいな体の俺がいくら頑張ってもまともに進めるはずが無い。

自身の無力を感じながら、心も体もしっとりと我が家を目指すことに。

 

そして状況が状況だけに仕方ないのだが、とにかく目立つ!

雨の日に傘も差さず、寝巻きのような格好、おまけに車輪付きで背面に2本の松葉杖が空高くそびえる姿はまさにモビルスーツ。

道行く人は俺のことをガンタンクと呼んでいたことだろう。

 

傍目に視線を感じながら、蛇行しながらを繰り返し走り続けるガンタンク。

途中溝にはまって「大丈夫ですか?」と声をかけられるも、恥ずかしさから火事場の馬鹿力を発動させペースアップするファインプレー。

そして気がつけば俺は家の前にいた。

 

もう満身創痍とはこのこと。

びっしょり濡れた包帯と、上がりきった息、曇りきったメガネは帰路の過酷さを物語る。

だが神様はここでまたも試練を与えてきた。


エントランスのドアが開かねえ!!

ちょっと前の話をすると、俺が今住んでるマンションを決めた理由が、ちょっとばかり立派なエントランスのドアだったのね。

 

当時は「おお、映画館のドアみたいで重厚だね」

とかアホみたいなこと言ってたんだけど、骨折した今は障害でしかない。

もうね、重くて全く開かないの。


正確に言うと、杖ついて全体重かければ開くんだけど、そしたら車椅子どうなんのよ? って話。

俺は悩んだ。何かいい方法はないものかと考えあぐねた。

 

そんで悩んだ末の手段は「あんよが上手作戦」

赤ちゃんが掴まってタカタカ鳴る木製の押し車よろしく車椅子を手押ししてドアに突撃するのだ。

 

悔しいが俺の今の歩行能力は9ヶ月くらいの赤ん坊と遜色ないので仕方あるまい。

早速車椅子に掴まり立ちして取っ手のほうに回り込む。これだけでも重労働だ

 

そして車椅子を扉にあてがい、押す!!

ふおおおおおおおお!!!

普段何気なく開けていたドアがこんなに重いものだったなんて、涙が出るぜ。

 

30秒ほど格闘していた頃だろうか、もう一度勢いをつけようと少し助走したら、中から別の住人が出てきた。

渾身の力で押していた俺はすごい勢いで前に飛び出す。

転ぶまいと車椅子のブレーキレバーを必死で握る。ビビる住人

 

雨で濡れた床をスリップしながら進む車椅子。その後を斜めになりながら必死に片足ケンケンで追いすがる俺。

そこで住人の顔が見える。とりあえずつんのめりながら謝る俺「あっあっあっすいまあっすいません! ちょっと足があっあっあっ!」

人間必死になると何が言いたいのか分からないような台詞を口走る。

若干自分でも笑ってたし

 

住人の顔を見ると若くてかわいらしい女の子。

目ェまん丸くしてこっちを見ていたが、まさか同じマンションでのファーストコンタクトがこんなシチュエーションとは……

そらびっくりするよね。足ブチ折って車椅子に乗ってるはずの人間が車椅子押してるんだもん。

何考えてるかわかんないよね。

 

一番恥ずかしかったのは、その扉は引かなきゃ開かないってこと。押すのは中から出るとき。

それまでずっと押してたのは何だったんだ……

 

恥ずかしさを笑ってごまかしながら会釈してとっととエレベーターに乗り込む俺。

この数十分で数年分の辱めを受けたわ

 

とりあえず部屋に戻ると何もやることが(できることが)ないのでベッドに横たわる。

この「骨折ダイアリー」では起こった事件を濃い目に書いてるけど、それ以外はほとんど寝てるからな!

 

もともと寝ることはわりと好きなので横になっていれば自然と目がトローンとしてくる。

次に気づいて目を開けたときには嫁が会社から帰ってきたときだった。

 

嫁、帰ってきて夕食を作り始める。

俺、それをただ見てるだけ。

 

ああ、何もできない男でごめんね。

申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

でも、嫁いわく「あんな病院にお見舞いに行かなくていいのが楽」だそうだ。プラス思考ワッショイ!!


俺もあの動物園から離れることができて表情が明るい。

幸せを噛み締めながらまたウルッとする。手術で涙腺も弱くなったみたい

まだ多少の頭痛は残っているけど、ポカリがぶ飲み作戦が功を奏してだいぶ楽になっている。

この分だと、2日後くらいには症状も落ち着くんじゃあないだろうか。

 

当たり前の生活が幸せ。

そんなことを思いながら一日は暮れていった。

 

つづく